腎移植大事典

出典:腎泌尿器疾患研究所

くすり事典
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 ご自宅に帰った場合、病院から指定されたお薬(特に免疫抑制剤)をしっかり内服することを心がけましょう。
 この時期は免疫抑制剤の投与量がしばしば変わることがあります。投与量を間違わずに決められた時間にきちんと服用するように気をつけましょう。
 また、水分の摂取も十分に行います。体格や個々の患者さんの状態で異なりますが、初期の段階ではだいたい2000~2500mlぐらいの飲水を勧めています。
 自宅療養しながら、外出が必要な際は基本的に人ごみを避けるようにし、できるだけマスクを装着して、手洗い、うがいを励行するようにして下さい。

 少しずつ免疫抑制剤の投与量が安定してくるところですが、まだ外来受診のたびに投与量が変わってくることがあります。お薬の変更などの際は確実に指示を守るようにしましょう。
 少しずつ外出する機会が増えてきますので帰宅の際には手洗い、うがいを励行して下さい。
 移植をするとこれまで以上に食欲がわいてきますが食べ過ぎはよくありません。アルコールも節酒して下さい。定期的に体重計に乗ってきちんと体重管理をしていきましょう。
 同様に血圧も定期的に自宅で測定して血圧が高いような場合は主治医に申し出てください。

 拒絶反応やウイルス感染症などがなければ腎機能、免疫抑制剤の投与量が安定してきます。
 水分も1500ml~2000mlぐらいの摂取量に落ち着いてきます。夏場、汗をかく場合はふだんより多めに水分を摂取することを心がけましょう。この頃から新鮮なお刺身などは食べてよいようになります。
 また運動に関しては軽いものであれば開始できるようになります。ただ、極度な低リン血症や骨粗鬆症の方は急に運動を始めることで骨折などを起こす可能性もあります。運動を始める前に必ず主治医に相談をして下さい。

 通常、腎生検が行われ、移植腎の組織学的な状態がわかります。拒絶反応がなければ一安心ですが、以後も免疫抑制剤の内服はきちんと行っていくことが重要です。
 また、移植後から血圧、体重管理を行っていますがこれらのこともきちんと行っていくことが大切です。またこれ以後、40歳代以上の移植患者さんは年に1回の人間ドックを受診されることをお勧めします。

 かなり日常生活も安定した時期にきていますが、ここでも改めて血圧や体重管理などの生活習慣を見直し、年に1回の人間ドックや健診を行い更なる長期生着をめざしてください。

 腎機能が安定しており、他疾患の合併もない状態であれば、これまでの管理がしっかりしていたということになります。そのままの状態を継続するようにしてください。
 移植後より血清クレアチニン値が上昇している場合も食生活、生活習慣をきちんとすることで上昇のスピードを抑えることができます。一つ一つきちんとやっていく積み重ねが大切です。


免疫抑制剤を飲み忘れたらどうなるのでしょうか?

 免疫抑制剤は基本的には移植腎が機能している限り、毎日、朝(夕)飲むのが原則です。しかし、人間である限り忘れるということはあります。週2、3回などの頻回の飲み忘れは確実に拒絶反応を引き起こし移植腎が長持ちしなくなります。通常、免疫抑制剤は2、3種類内服していることが多いのですが、どれかひとつを忘れてもよくありません。
 飲み忘れの対策としては、携帯などを利用して服薬時間を知らせたりするような工夫が必要です。また、特に若い人で夜、飲酒して飲み忘れることがありますが、このようなときは多少時間がずれますが夕食前に内服しておくといいでしょう。最近では朝1回のみの内服でよい薬も多くなっていますので、それらを利用することもいいでしょう。


移植後も糖尿病治療は必要なのでしょうか?

 そもそも糖尿病が原因で腎不全になる人が多くなっています。したがって腎移植を受ける人がもともと糖尿病ということはよくあります。このような場合は腎移植後も移植前と同じように糖尿病の管理が必要です。
 腎移植後に初めて糖尿病を発症する人もいます。頻度的には2~5%前後で決して多くはありませんが、注意が必要です。もし発症しても免疫抑制剤の内服量が少なくなるとともに改善する人も少なくありません。
 発症しにくくする工夫としては、食べ過ぎに注意すること、適度の運動でカロリーを消費することが必要です。特に体重の管理に注意して肥満にならないようにすることが必要です。また、どうしても血糖が高い場合は糖尿病の内服治療、ないしはインスリン療法が必要となりますが、インスリンの使用を必要とする頻度はかなり少なく1~3%程度であると考えられています。


肥満は移植腎にどのような影響があるのでしょうか?

 肥満は移植後に限らず非常によくありません。肥満は腎機能の悪化をもたらしますし、高血圧、糖尿病などの強い誘因となります。肥満とならないように食事、運動には厳重に注意しましょう。
 実は、腎移植後に患者さん自身ができる健康管理はそう多くはないのですが、この「肥満を防ぐ」ということが一番重要なポイントと言って差し支えないでしょう。


移植後の高血圧にはどのように対応するのでしょうか?

 高血圧は適切に管理することが必要です。高血圧を指摘されたら、まずチェックすべきは体重です。肥満であれば当然血圧は上昇します。また、ストレスも大きな血圧上昇の誘因となりますので、ストレスについても気を付ける必要があります。
 時に移植腎の腎動脈の狭さくが発生すると血圧が上昇することがあります。超音波検査でこのような腎動脈の狭さくは比較的容易に診断可能です。  
 また、まれですが、副腎といわれるホルモン産生臓器に腫瘍が発生して血圧が上昇することもあります。これも血液検査、CT、MRIなどの検査により診断可能です。
 一方、これらの明らかな原因が認められない場合は、原因不明ということで、「本態性高血圧」となり、服薬によるコントロールが必要となります。服薬する薬剤についての詳細はここでは述べませんが、必ず主治医と相談して内服をしてください。血圧の目標は120/70前後を一応の目安としてください。


喫煙してもよいのでしょうか?

 どのような理由があっても、全くよくありません。
 発がん、肺疾患などの誘因となりますし、移植腎の寿命を短くします。腎機能悪化の重要なリスクファクターとしてよく知られています。



移植後はどの位の頻度で外来通院するのでしょうか?また外来ではどのような検査をするのでしょうか?

 通常は腎移植後2週間もすると退院します。退院後3か月は、感染症、拒絶反応などの合併症が多い時期です。この時期は通常週1~2回の通院が必要となります。3か月すぎるとこのような合併症がおこる可能性はかなり低くなります。
 私たちは3か月から6か月ごろまでは2週間に1回程度の外来通院をお願いしています。腎移植術後半年すぎると通常は月1回の通院となります。仕事などで毎月通院できないという場合を除き通常は月1回の通院をお勧めしています。このような通院により、細かい管理ができ、様々な異常が早期に発見されやすくなります。
 外来での検査は主に血液検査、尿検査となります。通常は、血液(白血球、赤血球、血小板)の精査、腎機能、肝機能、炎症反応、免疫抑制剤の血中濃度、サイトメガロウイルスの検査などが行われます。私たちはこれに加えて定期的にBKウイルス、EBウイルス、移植腎および元の腎臓の超音波検査を行います。
 また、抗ドナー抗体(PRA検査)の検索も定期的にすることを勧めています。


移植後はがんになりやすいのでしょうか?検診はいつから、どうやって受けるのでしょうか?

 腎移植後の発がんは多いと考えられていますが、実は透析患者さんと比較すると必ずしも多いわけではありません。しかし、一般の健常者に比べるとがんの発生頻度はやや多くなっているのは確かです。
 私たちは、40歳以上の方、腎移植後5年以上経過した場合などにはできるだけ検診を受けることをお勧めしています。腎移植外来は腎機能を診ていますが、がん検診をしているわけではありません。上記の条件になる人は必ず検診を受けてください。通常の人間ドック、脳ドックなどがよいでしょう。


腎生検は受ける必要があるのでしょうか?またどのタイミングで受けるべきなのでしょうか?

 絶対ではありませんが、基本的には腎生検は受けたほうがいいでしょう。移植腎機能の問題が生じた場合や蛋白尿が出る時などは、強く移植腎生検が勧められます。
 また、移植前からドナーに対する抗体があるなど移植後に拒絶反応の発生リスクが大きいと考えられる場合は、定期的な移植腎生検が強く勧められます。
 私たちは、検査値で大きな問題がなくても、定期的な腎生検を強くお勧めしています。すなわち、クレアチニンの値、蛋白尿などだけでは必ずしも移植腎の異常を発見できないからです。通常移植後2週前後、半年前後(できれば)、1年前後に移植腎生検をお勧めしています。1年目で大きな異常がない場合は、3~5年目に1回の生検をお勧めしています。それ以上の術後に関しては現時点では決められた時期に移植腎生検をおこなっているわけではありません。



感染予防

ST合剤は内服した方がいいのでしょうか?

 ご存じのように、腎移植後のニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)の予防にST合剤の内服は非常に有効です。ST合剤の内服により、ほぼ予防可能と考えても差し支えないでしょう。
 私たちは、以前は術後6か月までは、ST合剤内服を必須にしており6か月以降は中止していました。しかし、近年、免疫抑制剤が強力になっていることから移植後5年以上のかなりの時間がたってもニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)を発症する人が見られるため、現時点では長期にわたる内服をお勧めしています。通常は、週3回、1回1錠を原則としています(週に3錠となります)。 
 また、ST合剤内服で移植腎機能が悪化すると考えている人もいますが、この程度の量ではまったく問題はありません。


インフルエンザワクチンは接種していいのでしょうか

 接種するべきです。インフルエンザワクチン接種によりインフルエンザが発症することは100%ありません。
 ただ、逆にワクチンを接種しているからといって感染しないわけではありません。発熱などインフルエンザを疑うときはためらわずに病院に行き検査、投薬を受けるべきです。


ほかのワクチンは接種する必要があるのでしょうか?

 必要なワクチン類は接種するべきです。ワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンがありますが、通常不活化ワクチンは問題ないものの生ワクチンの接種は、感染が発症してしまう可能性があることから勧められていません。
 肺炎球菌ワクチンはできれば5年に1回ぐらいの接種が勧められます。
 水痘なども一度かかった場合は通常2回かかることはありませんが、免疫抑制下では再感染することもあります。しかし、水痘ワクチンは生ワクチンであるため免疫抑制下では通常ワクチン接種は勧められていません。したがって、ワクチンを接種したり、一度罹り、通常2回は罹らないといわれているような感染症でも感染することがあるので、注意が必要です。よくわからないときは主治医にすぐに相談してください。
 また、子供が感染症にかかった場合は、再度感染することもあり得るために主治医に相談することが必要です。特に、水痘は重症化することもあるため自分の子供が感染した時は予防的な薬剤投与を受けるなど、厳重な注意が必要です。



移植腎の生着期間

移植腎はどのくらいもつのでしょうか?

 これはひとことでは答えられない質問ですが、現在、私どもの施設で腎移植を受けた方の中には現時点で移植後40年以上生着してお元気にしておられる方もいらっしゃいます。
 さらに現時点(2012年)での私たちの泌尿器科チームの患者さんの5年生着率は97%、10年生着率はほぼ90%以上です。長持ちさせるためのコツは、きちんとした服薬と体重管理、外来でのきちんとした管理につきます。
 医学は日進月歩です。常に私たち泌尿器科のチームでは研究、学会活動を通じて世界の先端の診療レベルを保つようにしています。通院しているうちにそれまで不可能であった治療が可能になったり新しい薬剤が利用できるようになったりします。



注意が必要な症状と対策

発熱

 38℃以上の発熱であれば原則受診するようにしてください。
 夜間であれば当直医に連絡してください。発熱は様々な原因で起こります。
 原因を特定することが大切であり、場合によっては入院加療の可能性も十分あります。


尿量の減少

 1日400ml以下の尿量を乏尿といい、このような状況は移植腎によくありません。原因として、水分を摂取しているにもかかわらず尿が出ない場合と、当初から水分を摂取していない場合の2つに分けられます。
 前者は腎機能低下、心機能低下、発熱、下痢などの感染が考えられ、後者は大量発汗、胃腸障害から飲水できないことによる脱水などが主な原因です。いずれの場合も移植腎に良い影響を与えませんのですぐに受診してもらう必要があります。


移植腎が固い、痛い

 一般的には拒絶反応の兆候です。すぐに受診する必要があります。
 しかしながら、急性腎盂腎炎でも似たような症状が起きます。いずれの場合も受診して血液検査、エコーを早急に行って診断を確定させます。



その他の症状と対策

顔のにきび

 ステロイド投与が影響している可能性が高いです。
 ステロイドは減量していきますが、それでも改善が認められない場合は皮膚科の専門医に相談することになります。


皮膚のただれ

 重篤な薬疹の場合は可能性のある薬を中止して、すぐに皮膚科の専門医を受診する必要があります。ヘルペスウイルス感染のような水疱が融合して皮膚がただれたように見える場合もあります。治療薬がありますが早期に服用する必要がありますので、皮疹が出た場合は早めに受診して下さい。

下痢、嘔吐

 感染性腸炎(細菌性、ウイルス性)、免疫抑制剤の副作用などが考えられます。重篤な腸炎の場合は脱水になる可能性もあり、十分な点滴が必要となります。


頭痛

 原因が多岐にわたることから可能なかぎり早めに受診をしていただき、原因を特定することが必要です。対症療法で経過観察可能な頭痛が一般的ですが、脳内疾患や緑内障、異常高血圧症などに起因する頭痛は速やかな診断・治療が必要とされるからです。


脱毛

 一部の免疫抑制剤の副作用によるところが多いと考えられています。原因と思われる免疫抑制剤を減量することもありますが、あまり減量にこだわって拒絶反応を発症することは避けねばなりません。大部分は徐々に脱毛の程度が改善されていきます。男性型脱毛症で内服するフィナステリドは免疫抑制剤の血中濃度に影響することから内服に際しては注意が必要となります。









日々の管理

体重は毎日量ったほうがいいのでしょうか?

 それほど神経質になることはありませんが、できるだけ測定すべきです。肥満は移植腎に大きな影響を与えます。標準体重を維持するためにも時々測定してください。


血圧は毎日測定したほうがいいのでしょうか?

 来院時の血圧測定では血圧が高めに出ることが多いため、ご自宅で朝食前と就寝前の血圧を毎日測定して記録されることをお勧めします。
 腎移植後は、収縮期血圧/拡張期血圧130/80mmHg未満を目標とします。


体温は毎日測った方がいいのでしょうか?

 毎日測定する必要はありませんが、38度以上の発熱が見られたときは、肺炎などのこともあるため自己判断することなく、必ず主治医に相談してください。特に移植後6か月の間は感染症の多い時期ですから特に注意が必要です。この時期の38度以上の発熱は無条件に病院に来院して検査を受けてください。


免疫抑制剤を飲み忘れた場合はどうすればいいのでしょうか?

 飲み忘れは常に起こりうることです。前述のように飲み忘れを防ぐための工夫も必要です。3~6時間の遅れであればそのまま内服してください。それ以上の遅れは次の内服時間に近くなることから、やむを得ず1回スキップとなります。
 内服時間はできるだけ一定の間隔が勧められます。しかし、それほど神経質になる必要はありません。通常は食後の内服で問題ありません。2~3時間のずれはまったく問題ありません。また、胃カメラなどの検査があり4~5時間ずれる場合でも問題ありません。これは海外旅行の場合などにも言えることです。 
 すなわち通常朝8時、夕8時に内服している人が朝飲み忘れた場合、11時に気が付けばすぐに内服していただければまったく問題ありません。また、夜の飲み会などがあるときは早めに内服して飲み忘れを防ぐなどの、飲み忘れ防止策が重要です。


水分はどのくらい摂取すればいいのでしょうか?

 これもそれほど神経質になることはありません。夏と冬では汗の出方、呼気からの蒸発量に違いがあります。したがって、季節、室温、乾燥度などで違うため適宜、のどが乾いたら飲水するということでよいと思います。
 大体の目標は一日、1~2リットルと考えて差し支えないでしょう。もちろん、夏場のゴルフ、サウナなどでは大量の発汗があり、大量に飲水することが必要となります。このような場合は電解質の喪失もあることから電解質を含んだスポーツ飲料が良いでしょう。



食事

移植後の食事ではどのような事に気を付ければいいのでしょうか?

 原則として、とくに食事で気を付けることはありません。透析中に食べられなかったものも食べられるようになります。大いに食事を楽しんでください。 しかし、食べ過ぎはよくありません。食べ過ぎによる肥満が一番の問題です。体重管理には十分注意してください。
 また、一部の食品(西洋オトギリソウ、グレープフルーツなど)で免疫抑制剤の濃度に影響を与えるものもありますので、注意が必要です。


塩分制限はした方がいいのでしょうか?

 血圧が130/80mmHg以上の人は必要です。7g/日以下の塩分制限を行うことが有効です。


コレステロールの管理はした方がいいのでしょうか?

 高脂血症はよくありません。高脂血症が心臓や脳血管の病気を引き起こすことはよく知られていますし、腎臓の機能悪化の誘因となることも知られています。  コレステロールが高いときには食事の制限は必要ですが、遺伝的に高脂血症になる人や、閉経後に上昇することも多く、そのような場合は内服管理が必要となります。必ずコレステロール、中性脂肪が適正な値になるように主治医と相談して管理してください。


刺身や生肉は食べてもいいのでしょうか?

 腎移植に関しては、大丈夫です。ただし、移植直後の3か月前後は免疫抑制剤の量がやや多いため控えめにしたほうがいいでしょう。ただし、生ものは常に新鮮なものか確認してください。また、牡蠣などは腹部症状を訴える人もいるため慎重に食べてください。


腎移植後のタンパク制限は必要でしょうか?

 基本的には腎機能が正常であればあまり気にすることはありません。もちろん、タンパクの摂取過剰は腎臓に負荷をかけるため適宜調節が必要となります。通常食べる量では大きな問題を起こすことはないと考えて差し支えありません。
 大まかな目安としてクレアチニンが2.0㎎/dlを超える時はタンパクの制限をしたほうがいいでしょう。しかし、この場合もそれほど神経質になることはありません。大まかな目安として・・というくらいにお考えください。


飲酒はしてもよいのでしょうか?

 原則、問題ありません。しかし、飲みすぎはよくありません。また、糖尿病などがありカロリー摂取制限が必要であるときもアルコールはカロリーが多いため飲酒は勧められません。


生野菜、果物は食べてもよいのでしょうか?

 原則、問題ありません。しかし、食べ過ぎはよくありません。また、糖尿病などがあり、カロリー摂取制限があるときも果物はカロリーが多いため大量の摂取は勧められません。生野菜は特に問題ありません。


ケーキやお菓子は食べてもよいのでしょうか?

 これもまったく問題ありません。しかし、食べ過ぎは太りますのでよくありません。
 また、糖尿病などがありカロリー摂取制限があるときも、カロリーが高いため大量の摂取は勧められません。これらは常識の範囲です。



スポーツ

運動はしてもよいのでしょうか?

 適度の運動は大いに勧められます。腎移植後1か月もすればゆっくり歩くなどの軽い運動は大丈夫です。
 腎機能に問題がなく身体的に問題がない場合は、様々な運動が可能です。水泳、散歩、ジョギングなどもよいと思います。ただ、都会の地面はほぼ舗装化されているためジョギングなどでは足に負担がかかり過ぎないような工夫が必要です。


どのような運動が適しているのでしょうか?

 特に制限はありませんが、水泳などの運動は酸素消費量も多くよい運動です。
 ただし、トライアスロンなどのような極端な負荷のかかる運動はあまりお勧めしておりません。

















妊娠、出産

移植後いつごろから、どのような状態になれば妊娠はできるのでしょうか?

 これは女性にとって非常に大きな問題です。通常の条件としては腎移植後1年経ち、免疫抑制剤の量が一定となること、拒絶反応がないこと、腎機能が安定しておりできるならばクレアチニン・クレアランスで50以上あることが望ましい条件です。
 しかし、必ずしもこれらの条件をクリアしていない場合もあります。その時は主治医によく相談してください。十分にリスクについても話し合いをしておくべきです。
 私たちは、このような場合、妊娠出産に伴う腎機能悪化に対する危険度と出産の希望を良く聞き、患者さんの希望通りにするように最大限努力しています。やはり、出産は女性にとって人生のなかでも最も大きな出来事の一つであり、それなりのリスクがあっても可能な限りトライすることは非常に意味のあることであると思います。したがって、たとえ腎機能の悪化が懸念される場合であっても、出産の希望が強ければ妊娠、出産を可能な限り許可し元気な赤ちゃんを産むことができるようにサポートするようにしています。


妊娠しても移植腎への影響は無いのでしょうか?

 原則として問題はありません。しかし、もともと移植腎に問題があった時には妊娠、出産後に腎機能の悪化を示すこともあります。前述の妊娠の条件を満たしていれば概ね問題を起こすことはありませんが、条件が悪い場合はそれなりのリスクが出てきます。しかし、前述のように出産は女性にとって人生の中でも非常に大きな意味を持っており、リスクを冒しても出産することも可能です。


生まれてくる子供への影響は無いのでしょうか?

 基本的には大丈夫です。免疫抑制剤や他の降圧剤などで変更や中止が必要となる薬もありますが、きちんとした管理をしていれば多くの場合問題ありません。もし、妊娠を希望する場合や、予期せず妊娠した時などは速やかに主治医に相談してください。
 もちろん腎移植患者さんの出産に際して先天奇形の発生がまったくないわけではありませんが、その頻度は基本的には健常者とほぼ同程度であると考えられています。


子供がほしいときはどうすればいいのでしょうか?(男性)

 全く、問題ありません。そのままお願いしております。


ペット

ペットは飼ってもいいのでしょうか?どのようなペットは飼ってはいけないのでしょうか?

 基本的にペットを飼うことは問題ありません。
 ただし、鳥類は多くの場合、オーム病を初めとして健常者にも感染するような様々な感染症を持っていることからペットとしての飼育は勧めていません。
























他科で処方される薬

抗生物質で内服できないものはありますか?

 抗生物質については多くの場合、内服は可能です。しかし、一部の抗生物質は免疫抑制剤、特にサイクロスポリン、タクロリムスでは血中濃度に影響があることが知られており注意が必要です。
 通常セフェム系、ペニシリン系は大丈夫ですが、マクロライド系は血中濃度を上昇させることが多く注意が必要です。きちんと主治医に相談しましょう。


























海外旅行の注意点

 内服の時間が問題となります。詳しくはメディプレスを参照してください。
MediPress腎移植 移植と海外旅行「時差と薬の服用時間」

海外で行ってはいけないところはありますか?

 原則特にありませんので透析中には楽しめなかった海外旅行を大いに楽しんでください。
 ただし、熱帯地方はマラリアなどをはじめとした感染症が多いため多少注意が必要です。このような感染症がある地域への旅行は避けたほうがいいのですが、仕事などでどうしても行く必要があるときは、一応、食事や蚊をはじめとした虫刺されには注意してください。



















移植後に内服する薬

免疫抑制剤について

 ほとんどの施設が3剤併用療法で免疫抑制を移植手術の前後にわたって行います。
 まずカルシニューリンインヒビターと呼ばれるタクロリムスとサイクロスポリンは3剤の柱ともいえる薬です。拒絶反応の時に最も活躍するT細胞リンパ球を抑えてくれる薬剤です。 
 次に重要なのは代謝拮抗薬といわれる、ミコフェノール酸モフェティール、ミゾリビン、アザチオプリンです。T細胞リンパ球同様、拒絶反応の時に活躍するB細胞リンパ球を抑制してくれます。この中でもっともよく使用されているのはミコフェノール酸モフェティールですが、下痢や腹痛などの腹部症状および白血球の減少が副作用としてあり、内服が困難なときにはミゾリビンを使用しています。
 女性移植患者さんが妊娠を希望したときには、ミコフェノール酸モフェティールやミゾリビンは胎児に催奇形性があるため、アザチオプリンに変更します。
 ステロイド剤は、きわめて古くからある免疫抑制剤の1つで、いまだに使用されています。ステロイド以外に免疫抑制剤が存在しなかった1980年代~1990年代前半には、同薬が大量に投与され、消化管出血などの副作用より重篤な合併症に至った移植患者さんも少なくありませんでしたが、タクロリムスやミコフェノール酸モフェティールがあるいま、ステロイドの使用量も激減しました。
 2012年からエベロリムスが登場しました。作用機序は上記に述べた3剤のいずれにも属しませんが、いま移植腎臓の長期生着を妨げる要因の1つと言われているカルシニューリンインヒビターの腎毒性を解決する薬剤として注目されています。移植後ある程度経過した維持期の患者さんに対してタクロリムスやサイクロスポリンを極限まで減量あるいは中止し、代わりにエベロリムスを加えることによって移植腎の更なる長期生着を達成できるかが今後の課題といえます。

感染予防

 上述した免疫抑制剤が特殊な感染を特に高率に引きおこすわけではありません。ただ重篤性などの観点から気をつける必要があるのはニューモシスチス肺炎および真菌感染です。
 ニューモシスチス肺炎の感染の予防として移植直後の半年間はST合剤の内服を義務化しています。2005年ころより日本中で同肺炎が移植後長期経過した患者さんにも感染するようになり、現在、ST合剤の予防内服を永続的に実施している施設も少なくありません。移植後に発症するニューモシスチス肺炎はエイズの末期に発症する場合よりも重篤といわれています。腎臓は愚か命まで脅かす肺炎ですから、ぜひST合剤の予防内服をお願いします。
 真菌の予防には移植後半年の間、ミコナゾールの内服を義務化しています。

降圧剤

 腎移植患者さんの降圧目標は収縮期血圧/拡張期血圧 130/80未満です。
 治療としてはまず生活習慣の是正を行う必要があります。塩分制限、ストレス軽減、禁煙、適正な体重管理などがポイントです。改善がなければ降圧剤の内服を考慮する必要があります。
 処方される降圧剤にはその作用機序により様々にありますが、代表的なものとしては、ARB製剤であるブロプレス、カルシウム拮抗剤であるアテレックなどがあります。患者さんがどのような要因によって高血圧をきたしているのかを分析することによって処方される降圧剤も異なってきます。

尿酸を抑える薬

 免疫抑制剤の副作用や移植腎臓の機能不全、過食、肥満によって移植後の患者さんが尿酸値高値を示すことはしばしばです。ただ、高尿酸血症から痛風発作になることは移植患者さんではそれほど多くありません。これは免疫抑制剤の働きによるものではないかと推測されています。
 尿酸を抑える薬として移植患者さんに最もよくつかわれるのはユリノームです。尿酸を体外に排泄させる薬ですが、肝機能障害が副作用としてあります。
 代表的なもう1つの高尿酸血症の薬としてザイロリックがあります。ザイロリックは尿酸合成阻害剤ですが、免疫抑制剤との相互作用から不可逆的な白血球減少を副作用として起こすために使用されることはめったにありません。
 最近発売されたフェブリクは腎障害のある患者さんにも安心して使用できる尿酸抑制剤として注目されています。

胃薬

 このように移植患者さんの内服薬は一生に渡って多種類に及ぶために同時に胃薬を処方されることが多いようです。
 免疫抑制剤、特にステロイド剤の重要な副作用の1つとして胃潰瘍や十二指腸潰瘍が知られており、特に移植の手術が終了した後の半年間はプロトンポンプインンヒビターであるパリエットなどを内服することをお勧めします。これらの薬は胸焼けの原因となる逆流性食道炎にも著効します。ただ、白血球減少などの副作用もあるため、移植後半年以上を経過した維持期の患者さんには他の弱い胃薬への変更も考慮します。

その他

 コレステロールの管理はとても重要です。透析を離脱して水分制限がなくなりステロイドの内服により食欲が亢進した状態になるため、移植後の体重が増え脂質異常症になる患者さんが多く見受けられます。動脈硬化の進行を遅らせて心血管疾患(脳卒中、虚血性心疾患)を予防するためにしっかりした管理が必要となります。
 一方、高脂血症は移植後に内服する免疫抑制剤の代表的な副作用です。このため、腎移植後の患者さんは中~高リスク群以上に該当すると思われますので、LDL-C 120mg/dl 未満を目標としてコントロールする必要があります。治療の基本は食事制限や運動によって適切な体重を維持することですが、それでも目標達成が困難な時は内服薬の必要があります。
 代表的な薬としてはリピトール、エパデールなどがあります。高脂血症の薬剤は多種多彩であり、目的に合わせて使い分けを行います。
 基本的には腎臓移植を行い腎機能がよくなれば2次性副甲状腺機能亢進症は改善します。しかし腎移植後6カ月で約三分の一の患者さんで、5年以上で約20%の患者さんで副甲状腺ホルモンの値が高値持続すると言われています。その原因として、副甲状腺ホルモンは腎機能が60%まで低下すると分泌が亢進すること、腎移植前に2次性副甲状腺機能亢進症の程度がすでに著しく亢進していることなどが挙げられます。
 腎臓移植後に副甲状腺摘出に至るような場合は1~5%程度と言われていますが、現在はレグパラ(シナカルセト)の登場のおかげですぐに手術をしなくてもしばらく副甲状腺ホルモンの変化を観察することができるようになりました。

移植後の公的扶助や医療費

障害者手帳の所持

 すでに腎臓機能障害1級の身体障害者手帳を所持しておられる方は手帳の返還をすることなく、そのまま1級として手帳を所持できます。また移植前に3級もしくは4級で認定されていた場合移植後に1級として再認定を受けることが可能です。

移植後の医療費と補助

 腎臓移植後にかかる医療費は術後1年程度の時点で総額700~800万円です(通院医療費用などすべて含めて)。年齢や加入している健康保険の種類にもよりますが患者さんの自己負担額は総額の1~3割程度です。
 しかし、多くの人が医療費補助を受けることができます。更生医療制度であり、18歳以上の患者さんに適用される自立支援医療(更生医療)と18歳未満の患者さんに適用される自立支援医療(育成医療)に分けることができます。
 どちらも世帯所得によって自己負担額が異なってきます(月額;0円、2500円、5000円、10000円、20000円)。自立支援医療は事前申請が必要です。生体腎移植の時は移植の日程が決定した時点で速やかに申請することが必要になります。献腎移植のときは、困難ですので術後であっても申請することが可能です。


移植した腎臓は何年くらいもちますか?

 移植された腎臓の状況、また移植を受けた患者さんの状況などがさまざまであり正確な数字を算出することは困難です。
 ただ、2007年に日本移植学会が出した統計では、移植腎の生着率(移植腎が機能して透析せずにいられる率)は1年94.2%、5年83.2%、10年67.4%とありました。概ね移植した患者さんの2人に1人は15年~20年はもっているということになります。


移植した腎臓は、どうしてだめになるのですか?

 大きく分けて2つの原因が移植腎喪失の原因としてあげられます。
 1つ目は慢性拒絶反応です。慢性拒絶反応はさらに、移植後早期におきた急性拒絶反応が抑えきれずに残ってしまっているタイプ、および、移植手術後数年経過した時点で移植した腎臓に対して免疫反応を起こしてしまっているタイプ、などがあります。最近になって、特に後者のタイプには患者さんの服薬が不充分で免疫抑制剤の濃度が低くなり拒絶をおこしている場合が少なくないことが判明しています。
 2つ目は、再発性の腎炎や自己免疫疾患による移植腎機能低下があげられます。特にIgA腎症、FSGS、MPGN、MUSなどの腎炎やSLEなどは再発をきたしやすいことから注意が必要ですが、最近の治療の進歩によりかなり改善しつつあります。
 その他にも、移植腎喪失の原因として、生活習慣病、感染症(尿路系)などがあります。また移植腎機能が良好なまま亡くなられる患者さんもいらっしゃいます。
 死亡原因には心臓脳血管障害、悪性腫瘍、糖尿病の悪化などがあります。危険因子である、血圧、脂質異常症、肥満、などの管理はとても重要です。


腎臓病が再発した時にはどうしたらいいですか?

 外来にて腎炎の再発を疑うときはほとんどが蛋白尿や血尿が出てくるときです。最終的に確定診断をつけるには移植腎生検が必要になります。 もっとも再発しやすい腎炎としてあげられるのはIgA腎症と巣状糸球体硬化症があります。
 IgA腎症は扁桃腺摘出による改善例が報告されており、再発した際には扁桃腺摘出やステロイドパルス治療などが施されます。
 巣状糸球体硬化症が再発した時にはまず血漿交換治療を行います。リツキシマブというリンパ腫の治療に使用する抗がん剤も有効性が多数報告されています。
 いずれにしてもしっかりした確定診断を腎生検で付けて腎臓内科の先生の意見も聴きながら治療を進めていくことが重要です。


移植した腎臓がだめになったら再移植は可能ですか?

 可能です。
 2回移植までは両側の骨盤腔が空いていますが、3回目になると移植腎をおさめる骨盤腔が空いていないため移植された過去の腎臓をはずしてから新たな腎臓を同部位に移植することになります。
 このような理由により複数回移植は数を重ねることに外科手技的な難易度は増してきます。
 それよりも重要なのは免疫学的な難易度です。患者さんは過去に移植された腎臓によって免疫的に感作されてしまっていますから、同様なHLA抗原が再度移植によって入ってきた場合は強烈な拒絶反応を起こします。すなわち過去の移植した抗原と新たな移植抗原が一致している場合は移植が困難となります。通常2回目まではそれほどこのようなリスクはありませんが3回以上になりますと免疫学的にも難易度が高くなります。このような免疫反応を弱めてから移植を行うことを脱感作治療といいます。感作状態がそれほど強くなければ血漿交換などの方法で脱感作そして移植することも可能です。


腎移植前から漢方薬やサプリメントを飲んでいますが、移植後も継続して大丈夫でしょうか?

 漢方薬やサプリメントを使ってみたい場合には主治医や薬剤師に相談してください。
 特に免疫抑制剤、降圧剤、抗凝固剤を内服している腎移植患者さんは薬との相互作用が問題となります。たとえば、グレープフルーツは免疫抑制剤のみならず降圧剤や脂質異常に使用する薬剤の血中濃度を高める、セイヨウオトギリソウは免疫抑制剤の効果を弱める、ビタミンK含有のサプリメントは心筋梗塞などで用いるワルファリンの効果を悪くする、などはよく知られています。